SEMINARS & PUBLICATIONS

セミナー・論文等

  • トップ
  • 論文等
  • 2025/11/11 ≪HBLOコラム≫ 【2026年1月1日施行】 取適法実務対応の重要ポイント解説!
論文

西野貴紀弁護士

≪HBLOコラム≫ 【2026年1月1日施行】 取適法実務対応の重要ポイント解説!

下請法が改正され、通称「取適法」(正式名称:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)が2026年1月1日施行されます。
取適法については以前のコラムでも触れたテーマです。今回は取適法への実務上の対応のポイントについて解説します。

取適法では旧下請法と比較して適用範囲が広がっており、これまで旧下請法の適用がなかった企業・取引にも取適法が適用される可能性があります。取適法違反が認められた場合、勧告を受け、社名が公表されることになりますので、施行日までの体制整備が必須です。
そこで、以下実務上の対応のポイントについて解説させていただきます。

 

1.実務上の対応ポイント

取適法では、下請法上の「親事業者」=委託事業者、「下請事業者」=中小受託事業者と表記されることになりました。以下ではこちらの用語で解説します。

 

⑴ 従業員基準への実務上の対応

法令適用の基準として、新たに以下の従業員基準が追加されました。取適法施行後は、取引前に、取引先の資本金要件と従業員要件の双方をチェックする必要があります。


【取適法の適用基準(従業員数)】
ⅰ 物品の製造・修理委託及び政令で定める情報成果物・役務提供委託を行う場合
委託事業者(親事業者):   常時使用する従業員数が300名超
中小受託事業者(下請事業者): 常時使用する従業員数が300名以下

ii 情報成果物作成委託又は役務提供委託(iの情報成果物・役務提供委託を除く)
委託事業者(親事業者) : 常時使用する従業員数が100名超
中小受託事業者(下請事業者): 常時使用する従業員数が100名以下


取引前に取引先の資本金要件及び従業員数を確認して取適法の適用有無を確認する必要があります。しかし、実務上、取引の都度取引先の従業員数を確認することは現実的ではありません。
実務上の対応方法としては、例えば、(i)又は(ii)の方法が考えられます。
(i)すべての取引先との間で取適法上必要な対応を実施しておく
(ii)一定の社内基準(例:従業員数350名/従業員150名)を設定

◇ 基準を下回る取引先は取適法適用対象として取り扱う
◇ 基準を上回る取引先は①当該基準を下回った場合の通知義務を取引先に課し、かつ②定期的に従業員数を確認して適用有無をチェックする

 

⑵ 代金額に関する協議拒否の禁止への実務上の対応

取適法では、中小受託事業者から代金額について協議を求められたにもかかわらず、協議に応じなかったり、委託事業者が必要な説明を行わなかったりした場合には、取適法違反とされます。
取引先から代金額について協議を求められた際には、適切な対応をする必要がありますので、まずは取引先と向き合っている事業部門に対する社内周知及び協議を求められた際の対応方法の整備が必須です。例えば、代金額について協議を持ち掛けられた場合には、速やかに社内の法務部門と連携するというルールを定め、取適法に則った対応を行うなど具体的な対応フローを整えることも考えられます。

 

⑶ 手形払等の禁止

取適法では、支払手段として、手形払を認めないこととされました。
電子記録債権やファクタリングについても、支払期日までに代金に相当する金銭(手数料等を含む満額)を得ることが困難であるものについては認められないとされています。
現在、手形払等を利用している企業は、施行日までに支払方法の変更が必須です。

 

⑷ 運送委託取引への実務上の対応

取適法では、発荷主から元請運送事業者への運送委託も取適法の適用対象とされました。
【運送委託の適法範囲】

2511画像1

※令和7年3月公正取引委員会・中小企業庁「下請法・下請振興法改正法案の概要」 改正内容の解説は(https://www.hblo.jp/publications/detail.php?id=3301)をご覧ください。企業としては、

自社内で元請運送事業者への運送委託の有無を確認し
資本金基準・従業員基準をチェックの上、適否を判断し、適用される場合には、
3条書面の提供等の対応をする必要があります。
取適法において、自社工場間での物品の運送を委託する場合は取適法の適用外など細かな議論があります。
しかし、実務的に各運送委託の内容を峻別して対応を分けることが厳密には難しいケースも多いです。現実的には、物品運送を委託している場合には、資本金要件又は従業員要件を満たしているすべての取引先に対して、取適法に即した対応(3条書面の通知など)を行うことになると予想されます。

 

2.まとめ 体制整備を急ぎましょう!

施行日(2026年1月1日)が迫っています。「知らなかった」では済まされないリスクを回避するため、取適法のルール理解と自社に合わせた実務体制の構築を急ぎましょう。
当事務所では、「基本ルールの解説」、「社内勉強会の実施」、「各社に応じた体制整備のご提案」まで幅広くご対応しております。実務上の対応方法につきお困りごとがあればお気軽に当事務所にご連絡ください。

CONTACT

まずは、お気軽にお問い合わせください。
お急ぎの方は 03-6452-9681 まで
お問い合わせください。