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西野貴紀弁護士
≪HBLOコラム≫ 2026年1月1日施行予定! 下請法改正案のポイント
2025年4月24日、下請法の改正案が衆議院で可決されました。今後、改正法が成立した場合、2026年1月1日に施行される見込みです。改正後の下請法は、名称が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(以下「中小受託法」といいます)に変更されます。
中小受託法は、改正前の下請法(以下「旧下請法」といいます)では適用外とされていた取引が適用対象となる等、実務上、影響のある改正内容が盛り込まれています。
中小受託法への対応については、上場準備会社においては、上場準備段階において適切な対応を求められることが想定されます。また、その他の会社においても、違反があった場合には勧告を受け、会社名が公表され、レピュテーションに影響が生じかねません。
そのため、今回は中小受託法の改正内容及び企業として重点的に対応すべき事項について解説させていただきます。
1.重要な改正事項と改正対応
⑴ 「下請」等の用語の廃止
中小受託法では、「下請事業者」という言葉を廃止し、新たに「中小受託事業者」という用語を採用しています。主な変更は以下のとおりです。以下、改正後の用語にしたがって解説をします。
(変更前) (変更後)
・親事業者 → 委託事業者
・下請事業者 → 中小受託事業者
・下請代金 → 製造委託等代金
⑵ 協議を適切に行わない代金額の決定の禁止
中小受託法では、新たに、中小受託事業者から代金額について協議を求められたにもかかわらず、協議に応じなかったり、委託事業者が必要な説明を行わなかったりした場合には、中小受託法違反とされます。
旧下請法では、“協議に応じない”こと自体を禁止行為とする規定はありませんでしたが、改正後は、協議に応じないことをもって中小受託法違反とされますので、適切に協議に応ずる必要があります。
⑶ 手形払当の禁止
中小受託法では、支払手段として、手形払を認めないこととされました。電子記録債権やファクタリングについても、支払期日までに代金に相当する金銭(手数料等を含む満額)を得ることが困難であるものについては認められないとされています。現在、手形払等を利用している企業は、施行日までに支払方法の変更をする必要があります。
⑷ 運送委託の対象取引への追加
中小受託法では、発荷主から元請運送事業者への運送委託も中小受託法の適用対象とされました。多くの企業にとっては、この改正事項が最もインパクトがあると思われます。
※令和7年3月公正取引委員会・中小企業庁「下請法・下請振興法改正法案の概要」
上図のとおり、これまでは、発荷主から元請運送事業者への委託は旧下請法適用対象外でした。そのため、いわゆる3条書面の提出等の対応は不要でした。
しかし、中小受託法では、発荷主から元請運送事業者への運送委託も適用対象となります。
企業としては、❶自社内で元請運送事業者への運送委託の有無を確認し、❷資本金基準・従業員基準をチェックの上、適否を判断し、適用される場合には、➌3条書面の提供等の対応をする必要があります。
⑸ 従業員基準の追加
中小受託法では、法令適用の基準として、資本金基準に加えて、新たに従業員基準が追加されました。具体的には以下の基準が追加されます。
ⅰ 物品の製造・修理委託及び政令で定める情報成果物・役務提供委託を行う場合
〔委託事業者〕常時使用する従業員数が300名超
〔中小受託事業者〕常時使用する従業員数が300名以下
ii 情報成果物作成委託又は役務提供委託(iの情報成果物・役務提供委託を除く)
〔委託事業者〕常時使用する従業員数が100名超
〔中小受託事業者〕常時使用する従業員数が100名以下
これまで、資本金が1,000万円を下回っていることをもって旧下請法が適用されないと整理していた企業についても、自社の従業員数が300名又は100名を超えている場合には、中小受託法の適用対象となり得ます。
各企業は、資本金基準により適用がないと判断していた場合でも、改めて従業員基準に照らして中小受託法の適否について判断する必要があります。中小受託法が適用される場合には、新たに3条書面の交付等の対応が必要になります。
2.まとめ
中小受託法は2026年1月1日施行が予定されています。改正事項のうち、⑷及び⑸は、中小受託法の適否の判断、交付書面の作成、各取引先への書面の交付フローの確立等実務上一定の対応が必要ですので、早めに着手しておくことが望ましいところです。当事務所では、適否の判断から交付書面の作成等の実務上の対応を含めてサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。
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