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  • 2026/01/07 ≪HBLOコラム≫ 300人以下の企業も無視できない公益通報者保護法改正とリスク管理
論文

谷貝彰紀弁護士

≪HBLOコラム≫ 300人以下の企業も無視できない公益通報者保護法改正とリスク管理

2026年12月までに施行される改正公益通報者保護法。従業員300人以下の企業において、「内部通報窓口の設置」は依然として「努力義務」に留まっています。しかし、今回の改正の目玉である「不利益な取扱いに対する刑事罰」や「不利益取扱いの推定」は、窓口の有無にかかわらず、すべての企業に適用されるという点に注意が必要です。
窓口がないからこそ、通報が外部(SNS、行政、マスコミ)へ直行し、場合によってはいきなり刑事罰のリスクに晒される——。今回は、このような中小企業を対象に危機を回避するための視点を整理します。

 

1. 改正の4つのポイント:全企業共通の「厳格化」

① 通報から1年以内の処分は「通報を理由としたもの」と推定される

通報から1年以内に、その通報者に対して解雇や懲戒といった「不利益な取扱い」を行った場合、「通報を理由とした不利益取扱いである」と法律上推定されます。これは300人以下の企業でも同様です。問題のある社員を解雇しようとした際、その社員が「実は行政に内部告発していた」ことが判明すれば、企業側が「処分は通報とは無関係な正当な理由によるもの」であることを客観的に立証できない限り、法違反と判断されます。

 

② 不利益な取扱いへの「刑事罰」と「高額な罰金」

通報をしたことを理由とする解雇や懲戒の不利益な取扱いには、新たに刑事罰が科されます。
• 行為者(上司等): 6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
• 法人(会社): 最大3,000万円の罰金(両罰規定)
これまで主に民事上の有効・無効の問題であった通報者への対応が、今後は「刑事事件」として扱われます。

 

③ 「通報者の特定を目的とする行為」の明確な禁止

「誰が通報したのか」を特定しようとする探索行為や、通報を断念させるような妨害行為が明確に禁止されました。窓口がない会社であっても、経営者が犯人捜しを行い、通報者を心理的に追い詰めるような言動をすること自体が、法違反となります。

 

④ フリーランスも保護対象

自社の従業員や通報の日から1年前に退職した元従業員だけでなく、業務を委託しているフリーランス(通報の日の前1年以内に業務委託をしていたフリーランスも含む)からの通報も保護の対象となります。契約解除などを背景とした不当な圧力をかけることはできません。

 

2. 中小企業が直面する実務上の課題

300人以下の企業においては、専任の担当者を置く人的リソースが不足している、あるいは組織が小さいため通報者の秘匿性が保ちにくいといった、現実的な壁があることも事実です。
一方で、社内に受け皿がない場合、不満や不正の指摘は外部(行政、SNS、マスコミ)へ直接流出する可能性が高まります。この「外部流出」が起きた際に、企業側が改正法の存在を知らずに不適切な対応(犯人捜しや、通報後の感情的な人事処分など)をしてしまうことが、最も避けるべき事態です。

 

3. 実務的なアドバイス

A. 「不利益な取扱い」に該当しない人事プロセスの徹底

刑事罰や推定規定への対策として最も重要なのは、「通報とは無関係な人事処分であること」を証明できる状態にしておくことです。日頃の指導内容や評価を、口頭だけでなく簡潔なメモやメールで残しておく実務を定着させてください。

 

B. 経営層・管理職によるルールの理解

「内部告発=裏切り」という発想・感情で動いてしまうことが、重大な法的リスクとなります。経営層や現場の責任者が、「通報者への不利益な扱いや探索行為は、法律で厳格に禁じられている」という最低限の知識を持つだけでも、偶発的な法違反の防止につながります。

 

C. 外部リソースの検討

自社での体制構築が困難な場合は、弁護士事務所を外部窓口として活用するなど、最小限のリソースで外部への直接流出リスクを減らす仕組みを検討することも一つの現実的な選択肢です。

 

4. まとめ

今回の改正は、全ての企業に対し、通報者への真摯な対応を求めるものです。300人以下の企業にとって、完璧な通報制度をすぐに構築することは容易ではありませんが、「公益通報者保護法は自社にも適用されている」という意識を持つことが、まずは何よりのリスク管理となります。2026年12月からの施行までまだ時間がある今、社内のコミュニケーションの在り方や、人事処分の透明性を改めて見直すことが、安定した組織運営に繋がります。
当事務所でも、「不利益な取り扱い」とみなされないための対応のアドバイス、外部窓口の導入や規程作成、社内向け勉強会の実施等幅広いサポートが可能です。遠慮なくご相談いただければと思います。

 

 

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