SEMINARS & PUBLICATIONS

セミナー・論文等

  • トップ
  • 論文等
  • 2024/12/11 ≪HBLOコラム≫ 代表取締役の住所非表示措置が運用開始しました
論文

谷貝彰紀弁護士

≪HBLOコラム≫ 代表取締役の住所非表示措置が運用開始しました

こんにちは。早いものでもう師走。2024年もあと数週間で終わりですね。
2024年10月1日から、商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第28号)が施行され、代表取締役の住所非表示措置の運用が開始されました。これにより商業登記に記載される代表取締役の住所を一部非表示にすることができ、プライバシーの保護に資すると言われています。ただし、デメリットもあり、また使える場面が限定的でもあります。既に代表取締役の方や、これから代表取締役になろうとする方は、制度の内容をよく把握したうえで、実施するか否かご検討いただくのがよいと存じます。以下では、細かい点は省きつつ概要を説明します。

 

1 従来の代表取締役の住所表示制度

法務局の登記事項証明書や、民間の会社が提供する登記情報提供サービスでは、法人の代表者の住所の記載が義務付けられています。したがって、誰でも登記事項証明書等の情報を知ることができます。

そもそも登記事項証明書等において、法人代表者の住所の記載が必要だった趣旨は、法人代表者を特定するための情報として重要であること、民事裁判において法人に営業所がない場合に裁判管轄や送達等の基準となることが挙げられています。他方で、法人代表者の住所表示により、DMが大量に送られる等の過度の営業行為の誘発、住所公開への抵抗感からの起業の躊躇、ストーカー等の被害などにつながることが懸念されていました。

今回の非表示措置は、こうした従来の住所表示の趣旨と、法人代表者のプライバシーの保護とのバランスを考慮して定められました。

 

2 対象者

代表取締役等住所非表示措置の対象者は、株式会社の代表取締役です。特例有限会社、合同会社や合資会社等の代表者は、現時点では対象ではありません。

 

3 住所非表示措置の効果

住所非表示措置を実施した場合、登記事項証明書やインターネットで取得できる登記情報のうち、行政区画以下の部分が非表示となります。

 

(従前の登記情報)

役員に関する事項: 東京都港区一丁目1番1号

代表取締役 甲野一郎

(非表示措置後の登記情報)
役員に関する事項 :東京都港区一丁目

代表取締役 甲野一郎

これにより、株式会社の代表取締役が一般人から登記事項証明書等を通じて住所を知られるリスクは、回避することができます。

 

4 住所の一部を非表示にするには?

非表示措置申出の要件は、登記の申請と同時に申し出ること、会社の実在性を証する書面等一定の必要書面を添付することです。必要書類は、上場会社か否か、既に非表示措置を講じているか否かで変わります。詳細は、以下の法務局のサイトをご確認ください。

 

法務省 代表取締役等住所非表示措置について

 

5 留意点

●金融機関から融資を受けたり、不動産取引を行うにあたって別の書面で代表取締役の住所を証明することを要求される等の一定の影響が生じる可能性がある
※登記事項証明書によって会社代表者の住所を証明することができなくなるため、別の書類によって代表者の住所の証明を求められる可能性がある

 

●非表示措置の申出ができるのは、設立登記、代表取締役等の就任、重任の登記、代表取締役等の住所移転による変更の登記等、代表取締役の住所が登記されることとなる登記の申請と同時にする場合に限られる
※非表示措置の申出は、登記変更等のタイミングでしか行えない

 

●過去に登記された住所の情報は、非表示にできない
※既に住所が記載されている代表取締役は、住所を変更しないと非表示措置の意味がない

 

●住所変更のたびに非表示措置の申請が必要
※手続を失念しないように気を付ける必要がある

 

●登記官が職権で非表示措置を終了させる場合がある
・非表示措置を希望しない旨の申出があった場合
・株式会社の本店所在場所における実在性が認められない場合
・(上場会社が)上場会社でなくなった場合
※完全に住所を秘匿できるわけではない

 

●訴訟等を考えている利害関係者は、法務局に対し利害関係を証明すれば、代表者住所の開示を受けることができる
※完全に住所を秘匿できるわけではない

 

6 まとめ

このように、代表取締役等の住所非表示措置は、一般人に対して住所を秘匿することができる効果はありますが、代表者の住所の証明を別の書面で行わないといけなくなる等のデメリットや、過去の登記事項証明書等に記載のある住所は秘匿できないといった、限界があります。現在代表取締役の方がこの措置を実施したい場合は、住所を変更するタイミングでの利用を検討するのがよいでしょう。これから代表取締役になる予定の方は、銀行融資や不動産取引等への影響を考慮して、代表取締役になるタイミングで利用することを検討するのがよいと思います。

CONTACT

まずは、お気軽にお問い合わせください。
お急ぎの方は 03-6452-9681 まで
お問い合わせください。