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  • 2024/07/04 ≪HBLOコラム≫ 2024年11月1日施行! フリーランス保護法対応のポイント
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西野貴紀弁護士

≪HBLOコラム≫ 2024年11月1日施行! フリーランス保護法対応のポイント

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「フリーランス保護法」といいます)の施行が2024年11月1日に迫っています。事業者の皆様は現在フリーランスに業務委託をする際、契約条件を書面にした上、支払期日を定めているでしょうか。今回施行されるフリーランス保護法では契約条件の書面化などが義務化されます。違反がある場合、勧告や命令を受け、さらに命令を受けた事実を公表されるリスクがあり、命令違反などがあると更に50万円以下の罰金を課される可能性があります。
フリーランス保護法に違反した場合には、勧告・命令を受けるほか公表に伴うレピュテーションリスクが想定されます。企業としては、フリーランス保護法に適切に対応していく必要があります。そのため、今回はフリーランス保護法違反のリスクやフリーランス保護法の対策について解説させていただきます。

 

1.フリーランス保護法違反のリスク

 

フリーランス保護法違反が生じた場合、企業には主に以下のリスクがあります。ここでは、ハラスメント防止措置義務違反には刑事罰がないなど、対応事項によって違反時のリスクは異なりますが、説明のため単純化させていただきます。

 

 公正取引委員会などから報告徴求及び立ち入り検査を受ける
● 違反の事実が認められた場合、是正措置を取るべき旨の勧告
● 勧告に対応しない場合、命令及び命令を受けた事実の公表
● 命令に違反した場合50万円以下の罰金

 

フリーランスの方は企業活動に欠かすことのできない存在です。フリーランス保護法違反が公表されると企業のレピュテーションが毀損され、優秀なフリーランスの方の協力を得ることが難しくなりかねません。企業としては、日々フリーランス保護法に適切に対応するとともに、万一当局から指摘を受けた場合には迅速に対応し、自社のリスクを最小限に抑える必要があります。

 

 

2.フリーランス保護法が適用されるケース

 

⑴ フリーランス保護法に対応すべきケースとは?

 

立ち入り検査、勧告・命令、公表、刑罰等のリスクが発生するのは自社の取引にフリーランス保護法が適用される場合です。フリーランス保護法が適用されるのは、「フリーランス」の方に対して「業務委託」をするケースです。そこで、フリーランス保護法対応要否を判断するにあたって重要な「フリーランス」(法律上は「特定受託事業者」)及び「業務委託」の定義を確認します。

 

2407画像1

 

【出典】「リーフレット(内閣委官房ほか)」1頁

 

 

 

⑵ フリーランス保護法が適用される「フリーランス」とは

 

 

フリーランス保護法が適用される「フリーランス」とは、以下の(1)又は(2)をいいます。

 

(1)個人であって従業員を使用しないもの
(2)法人であって、代表者以外の役員がおらず、かつ従業員を使用しないもの

 

事業者側がフリーランス保護法の適否を判断するにあたっては、委託しようとする相手方が「従業員を使用」しているかが重要なポイントです。そこで、「従業員を使用」の定義を確認しましょう。

 

「従業員を使用」とは、

(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ、(2)継続して31日以上雇用されることが見込まれる労働者を雇用することをいうとされています。

 

但し、労働者派遣法第2条第4号に規定する派遣先として、(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ、(2)継続して31日以上労働者派遣の役務の提供を受けることが見込まれる派遣労働者を受け入れる場合も「従業員を使用」に該当する点にご留意ください。
なお、事業に同居親族のみを使用している場合には、「従業員を使用」に該当しません

 

【出典】「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」3頁

 

 

⑶ フリーランス保護法が適用される「業務委託」とは

 

フリーランス保護法が適用される「業務委託」とは、

事業者がその事業のために他の事業者に(1)物品の製造(加工を含む。)、(2)情報成果物の作成、又は(3)役務の提供を委託する行為をいうとされています

 

【出典】「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」3頁

 

 

⑷ 対応要否判断のポイント

 

自社におけるフリーランス保護法への対応要否を判断するポイントは次のとおりです。いずれもYESの場合には、フリーランス保護法への対応を検討しましょう。

 

i 委託先はフリーランス保護法の適用される「フリーランス」(特定受託事業者)か?
ii 委託業務は(1)物品の製造(加工を含む。)、(2)情報成果物の作成、又は(3)役務の提供か?

 

 

 

3.フリーランス保護法に対する適切対応とは?

 

 

⑴ 対応事項の概要

 

フリーランス保護法における対応事項は以下の(1)から(7)とおりです。具体的な内容は、下記の【出典】「リーフレット(内閣委官房ほか)」2頁の画像をご確認ください。
(1)書面による取引条件の明示
(2)報酬支払日の設定・期日内の支払い
(3)禁止行為
(4)募集情報の的確表示
(5)育児介護等と業務の両立に対する配慮
(6)ハラスメント対策に係る体制整備
(7)中途解除等の事前予告・理由開示
対応事項(1)「書面等による取引条件の明示」のみでOKなのは、「従業員を使用していない」事業者です。従業員を使用している事業者の皆様は、最低でも(1)(2)(4)(6)を遵守することが必須です。さらに(3)(5)(7)を遵守する必要があるケースについて、以下順にみていきましょう。

 

 

2407画像2

 

【出典】「リーフレット(内閣委官房ほか)」2頁

 

 

⑵ 追加の対応が必要になるケース

 

「(3)禁止行為」の対応が求められるのは、1か月以上の業務委託を行っている場合です。あるフリーランスに対して1か月以上の業務委託を行っている場合には、そのフリーランスの方との間で、「(3)禁止行為」で定められている禁止行為を行わないように十分留意する必要があります。

 

「(5)育児介護等と業務の両立に対する配慮」「(7)中途解除等の事前予告・理由開示」の対応が必要になるのは、6か月以上の業務委託を行っている場合です。あるフリーランスに対して6か月以上の業務委託を行っている場合には、そのフリーランスの方との間で、「(5)育児介護等と業務の両立に対する配慮」「(7)中途解除等の事前予告・理由開示」の対応をする必要があります。

 

自社における対応事項を整理するにあたっては、フリーランスの方との間の業務委託の期間を確認するようにしましょう。

 

 

 

4.まとめ

 

フリーランス保護法の施行が2024年11月1日に迫っています。フリーランスの方に業務を委託している事業者の皆様は、自社の取引にフリーランス保護法が適用されるか、及び対応事項を確認し、自社での対応を進めていきましょう。当事務所では、フリーランス保護法の対応アドバイスも実施しておりますので、ご希望の方はお問い合わせください。

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