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  • 2026/02/10 ≪HBLOコラム≫ 【2026年12月1日施行】改正公益通報者保護法 ~企業が取り組むべき内部通報制度の再構築~
論文

西野貴紀弁護士

≪HBLOコラム≫ 【2026年12月1日施行】改正公益通報者保護法 ~企業が取り組むべき内部通報制度の再構築~

1.なぜ今“内部通報制度の再構築”なのか?

近年、上場会社における不祥事案は後を絶ちません。第三者委員会等の設置件数は2024年度には84件に達しました。これは氷山の一角に過ぎず、IPO準備会社における未公表の不正調査を含めれば、実態として多くの企業が不祥事対応の渦中にあります。
こうした状況下で、日本取引所自主規制法人および東京証券取引所は、内部通報体制の「実効性」を重視する姿勢を鮮明に打ち出しています。
昨年末に開示された「新規上場時の会計不正事例を踏まえた取引所の対応について」や、本年1月に公開された「内部統制強化・不祥事予防に向けたハンドブック」では、以下の点が指摘されました。
• 審査の厳格化: 新規上場時における内部通報体制の整備・運用状況の確認強化
• 不祥事の原因:「内部通報制度の形骸化・不備」が原因となっているケースがある
取引所は、単なる「窓口の設置」という形式要件を超え、不祥事を未然に防ぎ、自浄作用を機能させる制度構築を強く求めています。これは上場申請時に提出する各種説明資料の記載要領の以下の変更にも表れています。

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上場会社はもちろん、上場を目指す企業にとって、会計不正やハラスメント等の不祥事は、株価への壊滅的な打撃やレピュテーションリスクを招くだけでなく、上場維持や審査そのものを危うくする死活問題です。不祥事の端緒を早期に捉えるための「経営ツール」として、内部通報制度を見直し、再構築する必要があります。
さらに、公益通報者保護法も大きな転換点を迎えます。2026年12月1日に施行される今回の法改正は、通報制度の整備を促進するとともに通報者保護の実効性を改善するものです。
表面的な条文をなぞるだけの規程改定ではなく、通報者が安心して声を上げられる文化の定着と、情報の秘匿性を守り抜く厳格な運用が、これまで以上に高い水準で求められています。

今回の法改正を機に、自社の体制を総点検し、真に「不祥事の端緒を掴める」実効的な内部通報制度へと再構築すべき重要な局面を迎えています。
実効的な内部通報制度の再構築に向けて、まずは改正公益通報者保護法によって具体的に何が変わるのか。そして、企業はどのような「実務上の備え」を講じるべきなのかを専門的視点から解説します。

 

2. なぜ今、法改正が行われるのか?

近年、相次ぐ企業の不正発覚において、内部通報制度が十分に機能していなかった事例が散見されました。内部通報制度が機能しない背景には、以下の要因があると指摘されています。

❶そもそも内部通報制度が適切に構築されていない
❷内部通報制度が認知されていないためどこに相談したらよいかわからない
❸実効的な調査が行われない懸念や通報者として特定され、不利益を被る懸念

今回の改正は、こうした課題をふまえて、内部通報制度を実効的に機能させ、不正が早期に発見・是正されることを目的としています。
企業にとっては、かかる背景のもと施行される公益通報者保護法への対応は、不正を早期に発見し、社会的信用の失墜を未然に防ぐための仕組みとして内部通報制度を再構築する機会といえます。

 

3. 改正の主要ポイント:何が変わるのか(改正内容の解説)

改正の主要なポイントは以下のとおりです。

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4. 今すぐ取り組むべき対応事項

⑴ 社内規程の点検・改定

内部通報窓口の利用者にいわゆるフリーランスが含まれているか、探索の禁止、不利益的取り扱いの禁止規定が適切に定められているかなど内部通報規程の点検を実施しましょう。

⑵ 通報窓口従事者の指定と教育

従事者指定義務に違反した場合について刑事罰が新設されています。従事者を指定していない企業においては速やかに従事者を明確に定めましょう。その際、ただ従事者を指定するのではなく、従事者への教育、フォロー体制の整備が不可欠です。

⑶ 役員・従業員への周知啓発

改正公益通報者保護法の遵守体制の整備には企業全体で、内部通報制度は「密告制度」ではなく「会社を守るための制度」であるという文化を醸成し、かつ個々のルールを各従業員が正確に理解していることが必須です。
そのためには、公益通報者保護法の制度趣旨を正確に周知するとともに、通報者の探索の禁止、不利益な取扱いの禁止などの公益通報者保護法の原則的なルールについて周知啓発活動を行うことが重要です。

 

5. 改正公益通報者保護法対応から実効的な内部通報制度の構築へ

改正公益通報者保護法への対応は、企業にとって最低限のハードルに過ぎません。真の目的は、形式的に改正法に対応した体制を作ることではなく、「自浄作用が機能する、実効的な内部通報制度」を再構築することにあります。
通報者が「声を上げても不利益を被らない」と確信できる環境が整って初めて、潜在的なリスクは顕在化し、早期解決が可能となります。そのためには、形式的な規程・制度の整備にとどまらず、以下の「運用の実効性」を追求する必要があります。
• 秘匿性の徹底確保: 通報者が特定されない運用フローの厳格化
• 不利益取扱いの遮断: 組織的な報復を許さない監視体制の構築
• 独立性の担保: 経営層からの独立性を確保した調査ルートの確立
しかし、実務の現場では、「通報者の秘匿」と「事実関係の徹底調査」という課題に直面するなど、通報者とのコミュニケーションに苦慮するケースが後を絶ちません。窓口担当者が孤立し、判断を誤れば、それ自体が新たな法的リスクやレピュテーションの低下を招く恐れがあります。
当事務所では、窓口担当者向けの高度な専門研修から、困難案件における相談対応、さらには通報内容に関する調査業務まで、トータルでサポートしております。
今回の法改正を機に、貴社の内部通報制度をより実効的な制度へとアップデートしませんか。制度の再構築に関するお悩みは、ぜひお気軽に当事務所へご相談ください。

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