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  • 2025/03/11 ≪HBLOコラム≫ カスハラ対策が急務です!~東京都カスタマー・ハラスメント防止条例の施行に向けて~
論文

西野肇弁護士

≪HBLOコラム≫ カスハラ対策が急務です!~東京都カスタマー・ハラスメント防止条例の施行に向けて~

パートナー弁護士の西野です。3月に入り、まだまだ寒さは残りますが、少しずつ春の訪れを感じられる清々しい季節となりました。
さて、先日こちらのコラムで「お客様は神様か?”カスハラ”の事例と企業に求められる対応法」と題してカスタマー・ハラスメント(カスハラ)対策について紹介しました。カスハラを防止し、従業員が安心して働ける職場環境を確保することは、企業の持続的な成長において必要不可欠であり、このことは既に社会的なコンセンサスを得ているものと思います。
このような状況を受け、東京都でもカスハラ対策の必要性が認知され、カスハラ防止のための新たな条例(「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」)が2025年4月1日より施行されることになりました。この条例は、東京都内に本社または支社のある企業に適用されます。
そこで今回は、東京都カスタマー・ハラスメント防止条例の施行に向けて、企業に求められる、より具体的なカスハラ対策を考えていきたいと思います。

 

1 カスタマー・ハラスメントの現状

いわゆるカスハラ(顧客から従業員への暴言、威圧的な言動、金銭要求などの不当な要求)は年々増加しています。特に、接客業やサービス業などでは、顧客対応が業務の重要な要素であるため、カスハラへの適切な対策が一つの重要な経営課題となっています。
しかし、近年の調査では、東京都内に本社や支社を持つ企業の70%以上がカスハラ対策に遅れを取っているという現状が明らかになっています。
カスハラの増加は、従業員の安全と企業経営にも大きな影響を及ぼします。このような現状においては、企業にとっても具体的なカスハラ対策を講じることが急務となっています。

 

 

2 東京都カスタマー・ハラスメント防止条例の概要

東京都カスタマー・ハラスメント防止条例は、カスハラ防止に向けた社会全体への強いメッセージを発信しています。この条例において重要なポイントは以下の3点です。

 

①カスタマー・ハラスメントを禁止(第4条)

何人も、あらゆる場において、カスタマー・ハラスメントを行ってはならない。

②事業者のカスハラ防止義務を明記(第9条)

企業はカスハラ防止に向けた取り組みを講じるよう努力する必要がある。

③事業者に求められる必要な措置を明記(第14条)

企業はカスハラ相談窓口の設置や対応マニュアルの作成など、カスハラ防止に向けた具体的な対策を講じるよう努力する必要がある。

 

企業において特に重要な点は、③で求められる必要な措置の実施です。従業員の負担を軽減し、企業全体で適切な対応ができるよう、カスハラ対策の基本方針を明確化するとともに、相談窓口の設置や対応マニュアルの作成などを行うことが必要です。

 

 

3 企業に求められる具体的な対応策

①“カスタマー・ハラスメントを許さない”という企業姿勢の明確化

カスハラ対策の第一歩として、企業はカスハラを許容しない姿勢を明確に示すことが重要です。社内外に向けて「カスタマー・ハラスメントは許さない」というメッセージを発信し、従業員の安全を守る環境を整える必要があります。

 

② 拒否すべき一線の明確化

カスハラ対応では、従業員がどこまで対応を行い、どこからは対応を拒否するべきかを明確にすることが重要です。企業として「拒否すべき一線」を具体的に定めたカスハラ対応マニュアルを作成し、従業員が迷わず対応できる環境を整える必要があります。カスハラ対応マニュアルの作成において重要なポイントは以下の3つです。

 

・解釈不要なルールとすること

「金銭要求には応じない」、「クレーム電話が15分以上続いた場合は切っても構わない」等、現場での解釈が不要なルールにする。

・対応方法まで明示すること

担当者を変える、対応場所を変える、時間を置いてから対応するなど、対応する(拒否する)方法まで明示する。

・エスカレーションルールの明確化

現場の担当者が判断に迷った際に、どのようなフローで報告・対応すべきかを明確にする。

 

このような具体的なマニュアルを整備することで、個々の従業員はカスハラに毅然として対応することができます。

 

③ 相談窓口の設置と従業員へのサポート強化

カスハラと対峙するのは現場の担当者ですが、一人で対応することには限界があります。
企業として、従業員が安心して対応できるような支援体制を整えることが必要です。例えば、以下のように、現場の担当者が、本部組織や現場内の相談窓口・現場監督者と連携した体制を取ることが考えられます。

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(東京都「カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)」24頁参照)

 

 

4 カスハラ対策の強化が企業の未来を守る

カスハラを放置すると、従業員のモチベーション低下や離職率の上昇を招き、ひいては企業の生産性やサービスの品質にも悪影響を及ぼします。東京都カスタマー・ハラスメント防止条例の施行を機に、企業はより具体的かつ実効性あるカスハラ対策を講じることが求められています。
企業において従業員が安心して働ける環境を整えることは不可欠です。顧客に対するサービス品質の向上を図り、企業の持続的成長のためにも、カスハラ対策の強化は必要不可欠です。
今こそ、企業としてカスハラを許さないという毅然とした姿勢と具体的な対応策を整え、安心して働ける環境を構築することが求められています。

 

 

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